第39回 日本自殺予防学会総会

大会長あいさつ Greeting

人と人、人とサービス、サービスとサービスをつなぐ~自殺予防に向けて~

第39回日本自殺予防学会総会 大会長
青森県立保健大学健康科学部
教授 大山博史

 近年のわが国における自殺の推移をみると、平成10年に自殺者が急増して3万人を越えて以来、平成15年には自殺者数が最大のピークを迎えましたが、平成22年以降は漸減しています。最近の自殺者の増減の背景には壮年期男性の自殺者数の変動が大きく関与している一方で、高齢者の自殺者数は未だ漸増しています。
 その間、わが国では、平成18年の自殺対策基本法の制定前後から、各地で自殺予防対策が取り組まれてきました。最近では、NOCOMIT-J、ACTION-Jをはじめとする大規模な介入研究の成果が公表されています。現在も、国内各所において、様々な予防対策が実践されています。懸命になされている介入に対して、昨今、その効果に対する評価が求められてきています。
 
 私たちは、近年の自殺問題から何を学んだのでしょうか。この課題を論ずるために、今年度の総会では、「人と人、人とサービス、サービスとサービスをつなぐ~自殺予防に向けて~」というテーマを設定しました。自殺問題は社会的要因を踏まえて総合的に取組むべきものですが、その際の重要な視点の一つとして、人々やサービスの間に存する「関係性」を指摘することができます。具体的には、予防介入の成否の要因を省みるとき、援助のニーズを抱えていた人々に対して、実際にサービスが届いていたか、そして次のサービスにつながっていたか、という点を検討に含めることが有用です。
 平成24年の自殺総合対策大綱の見直しにおいて、従来の事前予防、危機対応、事後予防の分類に加えて、全体的予防介入(リスクを問わず万人を対象とする対策)、選択的予防介入(リスクの高い集団を対象とする対策)、個別的予防介入(リスクのより高い人を個別に追跡する対策)の視点が導入されました。ここに、人とサービスの「関係性」を考慮することにより、自殺予防対策の検討を深めることが期待できます。
 
 現在もまだ、多くの方々が自殺に追い込まれている実態があります。また、予期せぬストレスの蔓延によって自殺問題が再燃する可能性にも配慮する必要があります。一般市民、自治体、民間団体および専門家が協働・連携して、自殺リスクに対する頑健な社会的体制を築いていくことが望まれます。
 今年度の総会は、様々な規模の実践について、また、予防に成功した介入事例も困難であった介入事例についても、意見交換できる場にしたいと考えています。従来からなされている生物・心理学的研究、社会・文化・司法的研究、危険(防御)因子に関する研究も重要です。多様な観点から、自殺に関する学術的な議論を行う場として、本総会が役を果たせることを願っております。
 また、本総会では、第40回日本自殺予防シンポジウム青森大会を同時開催いたします。「日本いのちの電話連盟」、「あおもりいのちの電話」と共催で行います。幅広い領域の立場の方々と共に、自殺について議論できるものと考えております。
 本学会の議論が、今後のわが国の自殺予防対策に資することを願ってやみません。